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「競輪選手」
江崎魚彦さん
職業インタビュー 2

―やりがいを感じる場面はありますか?

努力すれば高収入という言葉は良く言いますが、それが顕著に出る職業だと思います。
この職業の考え方として「練習が仕事、レースが給料日」と考えている部分があるんです。

1日何10キロも走り何度もダッシュする日々の練習、相手の選手の研究、レースの映像を解析、レース先でもいろいろな選手と会話をし、相手選手の特徴を掴んだり、性格を分析したり、日々努力が必要です。それも全てレースで勝つためです。

レースもオリンピックや大きな大会とは違い、タイムやスピードを競うというわけではないので激しいぶつかり合いもあります。転倒などでのケガもあります。レースも苦しいです。

強い奴が勝つというよりは勝った奴が強いという考えです。
しかし、努力した分だけ自分に返ってくる仕事です。報酬という面もありますが、レースで勝った時の達成感は本当に素晴らしいものがあります。


―個人的なファンが付いたりなどはありますか?

トップクラスの選手だと若い女性が出待ちといった風景もありますね。
私の場合だと、長年、応援してくれるファンの方が居ます。

イベントを行うと必ず顔を出してくれる方もいらして、ファンの方々に支えられている部分は大きいです。そういう面もやりがいを感じるところですね。

これまでは、競輪はギャンブルということもありお客さんと交流する機会は少なかったんです。
しかし、ここ十年ぐらいでイベントなども増えてきました。選手が客席に行ってお客さんとお話ししたりする場面もあります。レース中はヘルメット被って下を向いているので顔が分からないのですが、お客さんからこういう顔だったんだ。

こういう性格だったんだ。などと、興味を持ってもらい話している内に、応援するよ! 食事でもしようよ!と声掛けてくれる場合もあります。
ファンの方は勝ち負けよりも、個人として応援してくれるのでありがたいことです。


―選手生命も長いのですよね?

プロスポーツ選手という面では長いと思いますが、競輪、競艇、競馬、オートレース、と4つある公営ギャンブルの中では体力が必要になってくるので、一番選手寿命は短いです。
ケガがなく、体も丈夫で、日々の練習もきちんとできて、という方は長く続けられますが。


―最長の方はおいくつぐらいですか?

現在はA級3班のクラスに62歳の方がいらっしゃいます。その方もデビューしたての19、20歳の方と対等に戦っています。
その年齢まで現役生活を送っている先輩方は日々の生活から食べ物まで摂生した生活を送っています。過去には最高齢は66歳という方もいらっしゃいまいた。その方は今、私が所属する埼玉県大宮競輪場の先輩なんですが、昔は中学卒業後デビューできたので16歳でから66歳まで選手生活50年間を過ごされました。


―仕事以外の楽しみはありますか?

ドライブとか旅行が好きですね。47会場、競輪場を周ると各地に行けます。
レース前は行けませんが、レース後成績が良かったり、気持ちに余裕があったり、次のレースまで日程に余裕があれば一泊、二泊して観光などをして帰るという楽しみはありますね。

大分の別府でレースがあった時に成績が良く、浮かれて福岡へ行き、福岡から那覇便に乗り沖縄に行ったこともあります(笑)。
北海道の函館にも競輪場があるので、船で車を運んでそのまま北海道を周って旅をするという方も居ますね。

―競輪選手に向いていると思う人はどういう人ですか?

運動神経や体つきが良い人は、努力次第で競輪学校に入ってデビューすることはできます。
デビュー後はいろいろと大変な部分もありますが。
しかし、才能も大事ですが、努力できるかも大事です。

この世界で良く言われるのは「努力する素質」という言葉です。努力する素質がある人が勝ち残っていける世界です。
あとは上下関係も厳しいので、礼儀が守れるという点も大事ですね。
若い選手の中には友達感覚で話してくる子が居たり、先輩から怒られただけでその先輩が嫌いとなってしまう人も居ます。

そういった人は向いていないです。
若くても上のランクになる選手もいるので強さだけで勘違いしてしまい、先輩との口の聞き方を忘れてしまうというのも良くないです。
運動神経が良い、体つきが良い、努力できる、礼儀が守れるなどが大事になってきます。

―競輪選手としての夢や目標はありますか?

元々、トップクラスになろうというような大きな目標は立てないできました。
一歩一歩、段階を上って行こうという想いで選手生活を過ごしています。
そう思ってしまうぐらい、一つ一つのステップが大変なんです。
レースのこと、点数のことなども常に考えていなくてはいけないですし。そういったことも踏まえ、「どの大会で優勝します」「絶対、勝ちます」などの目標は立てていないです。

今の目標としては、少しでも長く選手生活を送るということですね。先月7年ぶりに優勝したのもあるのですが、日々の訓練で準備はできています。チャンスが巡ってくれば、もう一回、二回は優勝したいです。

今のクラスは若い選手が多いのですが、それでも優勝できたということは42歳でもまだいけるんじゃないかなという気持ちはあります!
アマチュアの子が同じ練習グループに居るのですが、その子が試験に合格して競輪学校を卒業してデビューした時に一緒に戦えれば良いですね。

もう一つの目標は、現在、296勝、もうすぐで300勝なんです。300勝すると競輪業界に名前を残せるのでそこを目指しています。なにかしらの足跡をこの業界に残せれば良いですね。


―これから競輪選手を目指す人たちへのメッセージをお願いします。

女子の競輪も昨年から始まったので女性の方にも目指してほしいです。女性が活躍することによって、競輪業界も盛り上がりを見せると思います。
苦労も多い仕事ですがやりがいも多い職業です。

応援してくれるファンの方、友人、家族、大切なお金を掛けてくれるお客さまの期待を背負って走ることはとてつもないプレッシャーです。
逃げ出したくなることもあります。
しかし、レースで勝った時の達成感は素晴らしいものです。

報酬だって昔に比べたら減ってしまいましたが、まだまだ高い方と言えます。
トップクラスのレーサーは年間2億円稼ぐ方もいますし。努力次第で大きな夢も掴めます。
これから夢見る若者達の中にも、その夢を掴める人材が居るはずです。

若いうちにやりたいことを決めるのは難しいとは思いますが、競輪選手だけではなく広くいろいろなものを見たうえで目的意識を持って、これと決めたものには頑張ってほしいです。
その中の選択肢一つとして競輪選手というものを頭に入れてもらえれば良いですね。

(取材・文:舟崎 泉美)

 

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